「009 RE:CYBORG」感想(ネタバレあり考察)

現代神話の敵は何処に存在しているのか


※ジャケット画像はAmazonリンクを使用しています。

「009 RE:CYBORG(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)」観てきました。

早速のレビューです。

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注:以下の感想では、ストーリー的なネタバレはないものの、劇中で重要な「彼の声」やラストシーンに対する考察が含まれています。

「009 RE:CYBORG」は「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズの神山健治監督による3DCG映画。

僕がいつも行っているシネコンでは上映されておらず、どこで観られるのかネットで検索することからスタート。

すると目に入ってくる「わけが分からない」というレビューの多いこと。

どんなもんなんだろうな、と観に行く。

まぁ結論から言うと、神山監督の最新作なら、この程度の難易度は想定の範囲内。

おそらく「攻殻 S.A.C.」の神山健治監督による最新作、という認識がある観客には何の問題もないと思う。

問題は「攻殻 S.A.C.」を知らない「サイボーグ009」のファンだろうか。

もっとも、この作品は「サイボーグ009」の最新作という側面を持つのだから、その層を満足させる必要はあると思う。

さて、どちらかというと難解な部類に入ってしまうであろう「009 RE:CYBORG」だが、まず「難解な映画」というものを2つに分類してみたい。

(1)難解ではあるが、監督(脚本家)の中に明確な答えがある。

(2)難解なフリをしているだけで、そもそも監督(脚本家)の中に明確な答えが存在しない。

こう分類すると、(2)は典型的はダメな作品だ。これが許されるのは、事実に忠実に作ってあるノンフィクション作品やドキュメントなどであろう。

しかし、残念ながらフィクションで(2)に該当するダメな作品はけっこう存在する。

ここで「009 RE:CYBORG」を考えると、この作品は(1)だ。おそらく監督と脚本を兼ねる神山健治の中に明確に答えが存在すると思う。

そう考えると、劇中にもう少し分かりやすいヒントがあってもいいのではないかと思う。

なぜなら、ヒントを読み解くことが出来ない観客が「009 RE:CYBORG」を(2)に該当するダメな作品だと判断してしまうのが惜しいからだ。

そこで、作品中のヒントから「009 RE:CYBORG」を考察してみたい。

物語は2013年、世界各国で同時多発爆破テロ事件が発生しているところから始まる。

東京では、なぜか島村ジョー(009)が爆破テロ事件を引き起こそうとしていた。

この映画は3DCGのトゥーンレンダリングで作られているため、僕は技術的な部分にも大変興味があった。

だから、冒頭の島村ジョー(009)の瞳には、同級生の女の子にあるハイライトが存在しないのにすぐに気付いた。

このように「009 RE:CYBORG」で与えられるヒントは注意深く集中していないと分かりにくいものが多い。

また、台詞のみで説明されている部分も多く、基本的にストーリーの難易度は高め。

その後、物語は進んでいくのだが、そもそもゼロゼロナンバーサイボーグは現在どういう立ち位置なのか、そして過去には何があったのか。

そういったことも劇中のヒントから逆算して推理していかなければならないのだ。

しかし、そういったことが分からなかったとしても、きちんとゼロゼロナンバーサイボーグの各能力を使った見せ場は存在し(1名除く)、そういった部分は楽しい。

島村ジョー(009)の加速装置は主観・客観両方から描かれていて格好いいし、ジェット(002)が空を飛ぶ仕掛けもリアリティを考えてありニヤリとさせられる。

それなのにカタルシス不足が感じられるのは、「009 RE:CYBORG」の敵が分かりにくいのが原因だ。

確かに2013年の設定で、ブラックゴースト団でもないだろうが、同時多発爆破テロ事件の背後にある「彼の声」が何なのかが分かりにくい。

まず、「彼の声」が発現するトリガーは「例のオブジェクト」を見ることである。

これは分かりやすく、疑問の余地がない。

しかし、問題は、冒頭の島村ジョー(009)を始めとした「例のオブジェクト」を見ていないのに「彼の声」を発現している人間が存在することだ。

「例のオブジェクト」を見ていないのに「彼の声」を発現するトリガーは何なのか?

これがおそらく「009 RE:CYBORG」の最大の謎で、発現条件が複数あるのが話をややこしくしている。

かといって、これも劇中にヒントがあり、アルベルト・ハインリヒ(004)がみんなに説明する台詞に、ゾーン(※)や島村ジョー(009)の脳に対する言及がある。

また同様に人間の脳と神に対して言及する台詞もある。

それらから判断すると、「009 RE:CYBORG」では、人間の脳そのものを神とみなし、その脳の中に「彼の声(自爆)」に至るトリガーが最初から内包されているということだろう。

また劇中には「神は乗り越えられる試練しか与えない」という台詞が登場するが、「009 RE:CYBORG」では神は各個人の脳そのものであるとされているのだから、意味するところは、いわゆる人間原理「宇宙がこのように存在するのは、それを観察しうる人間が存在しているから」ということなのだと思う。

そう考えると、ラストシーンも、そういう世界が存在するのだから、それを観察しうる人間が(その瞬間どういう状態なのかは分からないが)存在しているという解釈になりうる。

ラストシーンについては、ちょっと解釈が個人的すぎる、かな?

わりと難解な「009 RE:CYBORG」であるが、帰宅してから検索すると、もともと原作にも難解な話があったようだし、むしろコアな「サイボーグ009」のファンにはこれくらいで良かったのかとも思える。(ちなみに僕は原作未読)

しかし、ライトなファン向けには、やはり最後に全員がユニフォームを着て勢ぞろいの予告編のシーンがあった方が良かったのではないだろうか(笑)

そこで往年のテーマソング(誰がために)を流せば、ライトファンも大満足だったのではないだろうかと思う(笑)

個人的には、上映時間や場所が限られすぎていて、3Dで観れなかったのが残念。

「009 RECYBORG」感想漫画コマ1

“…”

「009 RECYBORG」感想漫画コマ2

“加速装置!”

「009 RECYBORG」感想漫画コマ3

“加速装置!加速装置!”

「009 RECYBORG」感想漫画コマ4

“加速装置の台詞はないので脳内で補完”

(※)ゾーン:フローとも呼ばれる。人間が完全に集中・没頭している時に特殊な体験を得る状態を指す。アスリートにゾーン経験者が多いらしい。