新たな創世を経た「猿の惑星の夜明け」


※ジャケット画像はAmazonリンクを使用しています。
年をまたいでしまいました。猿の惑星・新シリーズ第2作の感想です。
注:基本的に以下の感想はネタバレなしの方向で書いています。ただ物語は何でもそうですが、一切予備知識を入れない方が当然楽しいので、その点はご了承ください。
「猿の惑星:新世紀(ライジング)」とは
「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の続編である。猿の惑星シリーズの解説は前回の「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」感想を参考にしていただきたい。
「猿の惑星:新世紀(ライジング)」序盤のあらすじ
シーザーをリーダーとする類人猿の勃興と同時に、人類が免疫を持たないALZ113ウィルスは世界中に拡散し、10年を経た現在、人類は文明を失い、その数を大幅に減らしていた。
地球は今や「猿の惑星」になったのである。
シーザーをリーダーとする類人猿は、高度な知能を手に入れ、平和な社会を築いていた。
類人猿は、長らく人類の姿を見ていないため、彼らは既に絶滅してしまったと考えていた…。
前田邦彦の感想
「猿の惑星:新世紀(ライジング)」は、前作「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」のエンディングで語られたウィルスの拡散からそのまま続き、人類の沈黙というオープニング・タイトルによって幕を開ける。
序盤から圧倒されるのは、シーザーをリーダーとする類人猿の狩りのシーンの迫力である。
巨大な樹木が立ち並ぶ森の中で縦横無尽に狩りを行う類人猿のVFXは、観るだけで単純にこれはスゴイと唸ってしまう素晴らしさ。
さて、旧シリーズでは1作毎に主人公が代わっていたが、本作は前作に引き続きチンパンジーのシーザーが主人公のようだ。
シーザーには家族が出来ていた。
シーザーの息子が画面に登場した時には思わず、旧シリーズを踏襲して名前は(コーネリアスか?)と思ったのだが、彼の名は「ブルー・アイズ」であった。
(ちなみに「ブルー・アイズ」は1975年に制作されたアニメ版の「Return to the Planet of the Apes」の主人公に与えられたニックネームである)
物語が動くのは、シーザーの王国に、絶滅したと思われた人類が姿を現したことによる。
マルコムをリーダーとする人類のパーティが山奥のシーザーのテリトリーに侵入してきたのは、そこが元は水力発電所のダムだったからであった。
豊かな水源の元に類人猿が定住したのは理に適っているので、この辺の設定は巧いなと思う。
人類のパーティと類人猿が接触することによって、お互いの陣営に議論が巻き起こる。
「猿の惑星」は旧シリーズにおいて、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、と種族(※1)によってある程度性格分けをしていた。
しかし、新シリーズは、前作にも登場した人類を信じないチンパンジーのコバなど、それぞれの種族にも様々な性格や考え方が混在する構成になっている。
そしてキーとなるのが「類人猿は類人猿を殺さない(Ape Not Kill Ape)」というシーザーたち類人猿の掟である。
旧シリーズを観た人はニヤリとなるこの言葉は、単に類人猿の間で殺し合いをしないだけでなく、殺し合いをする人類を疑問視し、類人猿の誇りとも言える掟なのだ。
この言葉がキーとなるのが旧シリーズでは「最後の猿の惑星」(A5)である。
「最後の猿の惑星」(A5)では、この掟を類人猿が最終的には破ってしまうため、
「(類人猿の社会も)人間社会と同じになった」と人類に言わしめた。
さて、「猿の惑星:新世紀(ライジング)」は、類人猿と人類のコミュニケーションがテーマの一つである。
異種間のコミュニケーションであり、この辺りが非常にスリリングに描かれている。
類人猿のシーザーと人類のマルコム、本来分かり合えるキャラクターが、最後に辿る結末は是非自身の目で確かめて頂きたい。
思えば、旧シリーズは、極めてSF的な設定ではあるが、根底にはその当時の社会問題である核平気や環境汚染などへの風刺が盛り込まれていたように思う。
本作「猿の惑星:新世紀(ライジング)」のテーマも、現在の社会問題を反映していて、この辺りはさすがと思える。
「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」をスタートとし、壮大なラストで幕を閉じる「猿の惑星:新世紀(ライジング)」
旧シリーズの時間軸を参考にすると、本作は「最後の猿の惑星」(A5)に近い構成になっている。
そうなると、次作はいよいよ「猿の惑星」(A1)、「PLANET OF THE APES/猿の惑星」(A6)に近いものになるのか?
(「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の中に、その伏線はある)
それとも旧シリーズとは全く違ったものが提示されるのか?
(新シリーズが、シーザーの物語と捉えると、その可能性も否定できない)
いずれにせよ次回作が非常に楽しみである。
(※1)邦題では「猿の惑星」となっているが、原題では猿(Monkey)ではなく類人猿(Ape)である。
「猿の惑星」に登場するのは、大型類人猿のチンパンジー、ゴリラ、オランウータン、ボノボ、(さらにヒトを含める説もある)のうち前3種。
もっともボノボは以前はピグミーチンパンジーと呼ばれていて、パッと見ではチンパンジーと区別しにくいので群れの中にはいるのかもしれない。