「スター・トレック イントゥ・ダークネス」感想(ネタバレなし)

エンタープライズの船長たりえる資質とは


※ジャケット画像はAmazonリンクを使用しています。

さて、ようやく本題の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の感想です。

お盆の先行上映で観たのに、その後、風邪でへばっていたので遅くなってしまった…。

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注:基本的に以下の感想はネタバレなしの方向で書いています。ただ物語は何でもそうですが、一切予備知識を入れない方が当然楽しいので、その点はご了承ください。

今回の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を観に行く前に、重点的に調べていたのが、リブート スター・トレックにおける時間軸と、オリジナルの時間軸の違い。そしてそれに伴う設定の変化。

アメリカでは5月に公開されつつも、日本では8月公開(それでも予定の9月より若干早まった)のため、調べれば一発でネタバレするところを必死に抑えつつ(笑)

まず、エンタープライズの就航は、オリジナルの時間軸では2245年。リブートによる時間軸では2258年。リブートはオリジナルから13年も後になっている。

また、前作スター・トレック(2009)で、ネロ船長が使用したナラーダにはボーグのテクノロジーが使われていたらしく、それが原因なのか分からないが、技術的にも違いが出てきている。

オリジナルのエンタープライズは全長288.6mであったものが、リブートのエンタープライズは全長725.348m!

単にデザインが変わっただけかと思ったら、24世紀のエンタープライズEより大きくなっていたのか!

何か内部がやけに広いな~とは思っていたが。いや、そうだとしても広すぎる気はするけれど…。

また、オリジナルの時間軸で、カークがエンタープライズの船長に就任したのは2264年(31歳)から。前作スター・トレック(2009)は2258年のことなので、リブート世界でカークがエンタープライズの船長に就任したのは25歳ということになる。

そして、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は前作より1年後の2259年…。

おや、1年後?

これは珍しい…。

映画の続編は、現実世界の時間差と物語世界の時間差を揃えてくるものが多い(現実世界で3年経てば、映画の中でも前作より3年といった設定にしてくるといった感じ)。

そこをわざわざ1年後に設定しているのはなぜだ?

そして、公式の予告編のチェック。なるほど、ん?この船は何だ?

あとは何と言ってもベネディクト・カンバーバッチ演じる謎の男、ジョン・ハリソンの正体をあれこれ想像しつつ劇場へ発進(エンゲージ)ですよ(お約束)。

今回は、まず3D版(吹き替え)を観る。

今回も脚本がとても上手い。素晴らしい。

元々スター・トレックシリーズは、直接的に描くことの出来ない現実の問題をSFという世界観で描くという特徴もある。

今回の脚本も、それらの点を踏襲しつつ、上手くまとめてある。

そして、なぜ設定が前作の1年後なのか。

それは映画を観ていて明らかになった。

スター・トレック イントゥ・ダークネスは主人公カークのストレートな成長の物語なのだ。

前作のラストで、確かにカークはエンタープライズの船長の座に就くが、言うなればそれはラッキーパンチだ。

カークが主人公だからエンタープライズの船長になるのは当たり前、ではない。

問題は、この世界のカークは本当にエンタープライズの船長たりえる資質があるのかということだ。

スター・トレック イントゥ・ダークネスは冒頭から、カークの船長としての資質を問うことの連続であり、そしてカークがどう変わっていくかという物語である。

僕が非常に感心したのは、実はこの部分こそが、スター・トレックシリーズの構造上の穴だと思っていたからだ。

というのも、基本的に今までのスター・トレックシリーズにおいては、ストレートな成長の物語は描くことが難しい部分だった。

スター・トレックシリーズでは、主人公はその宇宙船や宇宙ステーションの最高責任者であり、物語が始まった時点で、ほぼ完成(成長)しているのである。

視聴者が何歳の時点からスター・トレックシリーズにハマりだすかによっても差があるだろうとは思うが、基本的に、スター・トレックの主人公像とは理想の上司(あるいは家長)なのではないかと思う。

そのため、その優れた指揮官がクルーと共に困難なミッションを遂行していくというのが物語の基本構造になる。

(そう、今回のリブート内で説明するならば、本来スター・トレックの指揮官として主人公になるべきポジションなのはクリストファー・パイクなのだ)

この基本構造のおかげで、いわゆるストレートな成長の物語は、現在までのシリーズにおいては、若かりし頃の主人公の話や、主人公とは別の若輩者の物語という形で描かれてきた。

主人公のストレートな成長が物語の中心になったことはこれまでなかったのだ。

今回のリブート設定のおかげで、家庭環境も変わり、オリジナルシリーズよりも6年も早くエンタープライズに就任したカークは、スター・トレックシリーズの構造上の穴を埋めるにふさわしい存在だったわけだ。

荒削りながらも船長の座に付いたカークが、何を考え、理解し、成長し、そして最終的に何を決断するのか?

スター・トレック イントゥ・ダークネスの物語の本質とはそこだろうと思う。

そして、成長するカークが下した決断が、非常に素晴らしい。

この映画でも最大の見せ場だと思うし、何よりこれだけ重大なシーンが、スター・トレックの別作品のシーンの裏返しになっているという点に涙が…(ここで3Dメガネを一度取る僕)

そして本来ならば、リブートでありながらもプリクエルである本作においては使える設定も限られる中、ここまでの脚本が出来るのかと、ただただ感心させられた。

ヴィジュアルはオリジナルシリーズのデザインを踏襲しつつも、安易にレトロ・フューチャー路線に走らず、スター・トレックのオリジナルシリーズ(TOS)を高解像度で見ればこうだったのではと思わせるハイディテールも素晴らしい。

また、そろそろこの時代の○○○○○が見たいな~といったトレッキーの願いもしっかり実現している。(あ、ピアスかなるほどな~)

しかし、前作に比べてトレッキー向けの小ネタはむしろ少なくなっている印象。

これは、前作がリブートでありながらも、紛れもなくスター・トレックであることを示すために大量の小ネタが用意されていたことを考えると、自然な流れと言える。

あえて問題点を挙げるならば、いちおう作品の中に描写はあるものの、ジョン・ハリソンの正体がトレッキー以外の人間に一発で伝わるのかということか。

ただ、今回のスター・トレック イントゥ・ダークネスの前に復習として前作スター・トレック(2009)を再び観たのだけれど、物語の構造的には、むしろ前作の方が難しいのではないか。

なので、前作が楽しめた方なら、スター・トレック イントゥ・ダークネスは問題なく楽しめると思う。

また、スター・トレック イントゥ・ダークネスは、続編の恩恵を活かし、序盤から一気に話が進む。

各キャラクターを一から説明する必要もなく、ストーリーもダレることなくテンポ良く進む。

ストーリーは前述の通り、主人公カークのストレートな成長の物語であり、とても良く出来ている。

立ちはだかるジョン・ハリソンのキャラクターも魅力的だし、総じて、前作を超えるカタルシスを生み出しているのではないか。

僕自身がトレッキーのため、冷静にジャッジ出来ているのか分からないが、これはかなりオススメだと思う。

え、もっとスター・トレックを知りたくなった?そういう方には広大な世界が待ち受けていますよ。(そういう意味でも良く出来ている。)

「スター・トレック イントゥ・ダークネス」感想イラスト

“スポック このスーツを着て行ってくれ”
“論理的にお断りいたします”