世界でヒットした「古くて新しい組み合わせ」
世間でめちゃくちゃ話題になった、映画「君の名は。」を観ることができた。
最初に言ってしまうと、面白かった。
しかし、近い業界のプロからは猛烈に批判を受けているという不思議。
そういった部分もあわせて考えてみたい。
実写にするか、アニメにするか
まず、僕は、なんらかのストーリーを映画化する場合、実写にするか、アニメにするか、選べるのなら、実写で作った方が良い、と考えている。
理由は、「実写の方が説得力が増す」から。
たとえば、映画「LOVERS(十面埋伏 / House of Flying Daggers)(2004)」
この映画、ストーリーはめちゃくちゃだし、時制の描写もおかしい。
しかし、実写であるがために、妙に説得力があり、けっこう観れてしまう。
序盤の太鼓を使ったダンスのシーンは圧巻だし、ダガーを自遊自在に投げるのも、実写(CG)ゆえに、「訓練すれば本当にこんな軌道で投げられるのでは?」と思えてくる。
もし、これをそのままアニメにした場合、ダガーがそんな軌道で飛ぶわけがないだろうと言われてしまうと思う。
また、僕は、実写で成立するものをアニメにすることに疑問がある。
たとえば、アニメ映画「おもひでぽろぽろ(1991)」
声をあてているのが、声優ではなく、実際に演技ができる柳葉敏郎と今井美樹。
キャラクターデザインも2人に似せているし、声も本人丸出し。
さらに、舞台は実際にロケができる山形市。
柳葉敏郎と今井美樹で、実写で成立するのに、なぜこれをアニメにしなければいけないのか意味が分からない。
そういった考え方なので、「君の名は。」に関しても、実写で成立するのでは?と思っていた。
ところが、友人に、「アニメの方がストーリーに入り込める」と言われたのである。
なるほど。確かにそれはあるかも。
日本の実写映画の場合、その映画に出演した俳優が、バラエティ番組で、「私が出演した映画が公開されます。是非ご覧ください」のあと、芸人が「宣伝かい!」とツッコミを入れる。
これは悪いことではないが、それから映画を観て、「この俳優さん、バラエティ番組で頑張っていたなぁ。」などと余計なことを考えてしまうことはあり得る。
また、映像がハリウッドには及ばない日本の実写映画と、そのクオリティが世界トップクラスの日本アニメを比較した場合、日本ではアニメで作ることに意味があるのかもしれない。
声優の選択さえおかしくなければ、アニメの方がストーリーに入り込めることもある。
それに、「君の名は。」には、実写にすると生なましくなってしまうシーン、アニメでないと成立しないシーン、がある。
なので、「君の名は。」は、アニメであることが正解な気がしている。
「君の名は。」のストーリー構成
さて、かなり話が脱線してしまったが、「君の名は。」のストーリーだ。
このストーリー、エンディングは2つ選択できると思う。
「ハッピーエンド」か「アンハッピーエンド」だ。
そんなの「ハッピーエンド」に決まっているじゃないか!
と、あなたは思うかもしれない。
でも、「アンハッピーエンド」をたどる作品は少なくないし、僕がこのストーリーを思い付いたら、「アンハッピーエンド」を選択する。
人生は頑張っても報われないこともあるし、それでも頑張らなくてはいけない瞬間というのも美しい、と思うから。
僕は、「君の名は。」で、ストーリーが、途中から意外な方向に舵を切ったときに、このあとは「アンハッピーエンド」になるのかと思って、泣いてしまった。
ところが、「君の名は。」は、(あくまで僕の)予想をはずれて、奇跡的な「ハッピーエンド」であった。
それで、「ハッピーエンド」も良いなぁ、と、またそこで泣いてしまったのだ(笑)
しかし、最初からストーリーを思い返してみると、「君の名は。」は、設定も伏線も、「ハッピーエンド」に向かって緻密に構成されていたことに気付く。
僕が、勝手に伏線を無視して泣いていたという(笑)
「君の名は。」は「古くて新しい組み合わせ」
「君の名は。」は、映画好きな人は、他に似たような作品をいくつも挙げられるだろう。
実際、「君の名は。」を批判している近い業界のプロは、それを「売れる要素がてんこ盛り」「当たる要素がてんこ盛り」と言っている。
しかし、これはちょっと的外れな批判だ。
なぜかと言うと、ジェームス W.ヤング「アイデアのつくり方」の言葉を借りれば、
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」から。
ちょっと考えて欲しい。
現在、物語とは、昔のものから含めてとんでもない量になっている。
シェイクスピアの36分類(※)などの俗説もあるように、物語のパターンは出つくしていると言うこともできる。
つまり、評価されるのは、既存の要素の「新しい組み合わせ」の部分であるべきなのだ。
それに、そもそも「君の名は。」で組み合わせられている要素は「心と身体が入れ替わる」「タイムスリップ」「ひねりのない直球のボーイ・ミーツ・ガール」と、むしろ今となっては手垢が付きまくった「売れない要素」「当たらない要素」と言ってよい。
むしろ、「売れない・当たらない要素がてんこ盛り」であって、批判の前提から間違っている。
「ありきたりの食材を使って、新しい料理を一品出してきました」というのが「君の名は。」なのだ。
だいたいタイトルの「君の名は」だって、ちょっと年配の世代なら「真知子巻き?」ってな話である(笑)
逆に、そういった昔ながらの要素と、その新しい組み合わせが、それらを知らない今の若い世代に新鮮に感じられたために刺さった、ということだろう。
最終的には、近い業界のプロの的外れな批判をものともせず、「君の名は。」は、世界規模で大ヒット。
「君の名は。」の、「古くて新しい組み合わせ」が、世界的に評価されたということだろう。

“重要なのは組み合わせ”
- (※)シェイクスピアの36分類
- シェイクスピアは物語には36のパターンしかないと分類したという話…と記憶していたが、調べてみるとこれがどうにも怪しいので俗説とした。興味のある方は検索してみて欲しい。
前田邦彦の採点と点数
- ストーリー: 15点(20点満点)※感情を揺さぶられるストーリーが良い。
- 設定: 5点(10点満点)※入れ替わっている間に今日の年号に気が付かない理由がどうしても思い付かない。
- 映像: 15点(20点満点)※背景含め美しい。
- 編集・演出: 10点(10点満点)※序盤から途中でストーリーのトーンが変わるところが巧い。
- キャスティング・演技:7点(10点満点)※悪くないが、若干気になる部分がある。
- 音楽・効果音: 10点(10点満点)※いいところでRADWIMPSの曲が流れて気分が上がる。
- 前田邦彦の+アルファ:10点(20点満点)※真正面から奇跡を描ききるというのは、勇気がある。
【君の名は。】の点数は【72点!】
