「スター・トレック BEYOND」感想(ネタバレなし)

安易な路線変更が好調な流れにブレーキをかける

※ジャケット画像はAmazonリンクを使用しています。

映画「スター・トレック BEYOND(STAR TREK BEYOND) 」とは

「スター・トレック(2009)」「スター・トレック イントゥ・ダークネス」に続く、リブートシリーズの3作目。

スター・トレックの劇場版としては、13作目にあたる。

監督は、前2作のJ・J・エイブラムスから、ジャスティン・リンに交代。

リブートシリーズのAOS(Alternate Original Series)の時間軸が、ケルヴィン・タイムラインと呼ばれるようになったらしいので、以下そのように表記。

「スター・トレック BEYOND」序盤のあらすじ

ジェームズ・T・カークが、エンタープライズの船長になり、ファイブイヤーズ・ミッションに就いて3年の月日が流れようとしていた。

誕生日を2日後に控えたカークは、次の誕生日で、U.S.S.ケルヴィンで殉職した父、ジョージ・カークの年齢を上回ることになる。

宇宙を旅するうちに、カークは、自分の信念を見失っていた。

そして、エンタープライズは宇宙基地ヨークタウンに到着する…。

前田邦彦の感想

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(注:基本的に以下の感想はネタバレなしの方向で書いています。ただ物語は何でもそうですが、一切予備知識を入れない方が当然楽しいので、その点はご了承ください。)

いよいよスター・トレック(2009)に始まるリブートシリーズも第3弾。

僕は「スター・トレック BEYOND」を堪能するべく、いつも行く映画館ではなく、4DX3Dのある映画館へ行くという気合の入れようである。

さて、正直に言ってしまうが、今回の「スター・トレック BEYOND」、個人的にはあまり面白くなかった。

僕はスター・トレックの熱烈なファン=トレッキーなので、本当は新作を絶賛したい。

ではあるのだが、明らかに「スター・トレック(2009)」「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の前2作に対して「スター・トレック BEYOND」は失敗している。

「スター・トレック BEYOND」を観終わって、トレッキーだからこそ、真剣にその失敗を考察してみた。

「スター・トレック BEYOND」は、ストーリーは悪くない。社会世相を反映した内容(敵)はスター・トレックの伝統である。各キャラクターの見せ場もある。今だからこそできる映像も良い。音楽も素晴らしい。と、良くまとまっている。

良くまとまっているし、トレッキーが手を叩いて喜ぶようなシーンも用意されている。

でも、ぶっちゃけ面白くないのだ。

問題点は2つある。

・スター・トレックであることの必然性が薄い。

・予告編のネタバレが酷すぎる。

まず、スター・トレックであることの必然性が薄いこと。

これが大問題だ。

そもそも、ケルヴィン・タイムラインとは、膨大なスター・トレックシリーズの設定を生かしつつ、映画版をパラレルワールドで展開するという驚きのアイデアであった。

イレギュラーな世界にもかかわらず、「スター・トレック(2009)」「スター・トレック イントゥ・ダークネス」において、トレッキーが「これは紛れもなくスター・トレックだ」と納得していたのは、映画の随所からスタッフのスター・トレック愛が溢れていたからに他ならない。

具体的には、スター・トレックの世界観を大事にし、各所にトレッキーが納得できる要素をきちんと入れていたことだ。

結果、「映画として楽しい、しかもトレッキーなら二度美味しい」という作品に仕上がっていたのである。

ところが「スター・トレック BEYOND」では、映画会社パラマウントが、作品をトレッキー寄りではなく、万人受けするようにすれば興行収入が上がると考え、それを実行してしまったのである。

そのため、脚本を、前2作のロベルト・オーチー、アレックス・カーツマンから、モンゴメリー・スコット役を演じるサイモン・ペッグに書き直させてしまった。

結果、スター・トレックらしさが大幅に減少し、万人受けを目指した単なるアクション映画という趣きになってしまった。

また、トレッキーが首をかしげる描写も散見される。

一例を挙げれば、本作の舞台となるヨークタウンは、艦隊に同名の宇宙船が存在するはずで、本来は基地の名前にしてはいけないのだ。

そして、ここまで、カークの成長物語としての新機軸と感動を打ち出してきた、ケルヴィン・タイムラインでのスター・トレックなのに、今回は重要なその路線すら見失ってしまった感すらある。

ファンが支えている作品を、万人受けするように改変すれば興行収入が上がるという考えが既に時代遅れ。

実際、アメリカでの興行収入は、「スター・トレック(2009)」「スター・トレック イントゥ・ダークネス」と右肩上がりだったところにブレーキがかかり、「スター・トレック BEYOND」の興行収入は「スター・トレック(2009)」にすら及んでいない。

IMDb(The Internet Movie Database)の評価もケルヴィン・タイムライン3作の中で最低点である。

当ブログでも以前に言及しているが、映画の最近のトレンドは、「コアなファンを囲い込んで離さない」だと思う。

今や一見さんお断り状態で、万人受けとは言いにくい状態になっているマーベル・シネマティック・ユニバースの映画が、全米映画歴代興行収入ランキングに何本入っていると思っているのか。

もう1つの問題点は、予告編のネタバレが酷すぎること。

僕は、今回の「スター・トレック BEYOND」も、今までのスター・トレックの映画と同様に、予告編を何回も観てわくわくしていた。

ところが、本編を観て分かることになるのだが、「スター・トレック BEYOND」の予告編はネタバレのオンパレード。

とくに、作品中で、このピンチをどう乗り切るのか!といった部分に対する答えが、予告編にほとんど含まれている。

そのため、映画を観ている最中にまったくドキドキしない。

なぜなら、次のシーンを予告編で事前に観ているから。

一体何を考えてこんな予告編を作ったのか。

これはアメリカのオリジナルの予告編も観ているので、日本のローカライズの問題ではない。

この、予告編が酷いという問題は、厳密には作品の問題ではない。

しかし、ファンを楽しませようという視点の欠如という意味では、最初の問題と根が同じだと思う。

辛い批評をしてしまったが、これもスター・トレックを愛するがゆえということで、ご容赦いただきたい。

さて、スター・トレック周辺では、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」から「スター・トレック BEYOND」までに、いくつかの重大なニュースがあった。

まず、オリジナルシリーズからのスポックを演じたレナード・ニモイの死去。

スポックはオリジナルのタイムラインから、ケルヴィン・タイムラインに来ており、「スター・トレック BEYOND」では、レナード・ニモイの死が物語に反映されている。

そして、本作でもパヴェル・チェコフを演じているアントン・イェルチンの事故死。

そのため、本作「スター・トレック BEYOND」が彼の最後の作品となる。

ご冥福をお祈りしたい。

ケルヴィン・タイムラインのスター・トレックは、3部作という噂があったが、既に第4作である次回作の製作が進行中だ。

今回の「スター・トレック BEYOND」は、興行収入面で明らかに失敗しているので、きちんと路線を修正していただきたいところ。

また、2017年には、「スター・トレック エンタープライズ」以降、12年ぶりとなる新TVシリーズである「スター・トレック ディスカバリー」の放送が決まっている。

こちらはケルヴィン・タイムラインではなく、オリジナルのタイムラインでのストーリーになる。

その辺は、出来れば、また改めて記事を執筆したい。

「スター・トレック BEYOND」感想

“今後は私もレギュラーよ”
“それはどうかしら”