「インセプション」感想(ネタバレなし)

物語の盲点に切り込む鮮烈なビジュアル


※ジャケット画像はAmazonリンクを使用しています。

その予告編を観た瞬間、長年映画に親しんだ嗅覚が、これはスゴイ作品ではないかと告げていた「インセプション」観てきました。

久しぶりに、観る前から非常に楽しみにしていた映画でした。

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注:基本的に以下の感想はネタバレなしの方向で書いています。ただ物語は何でもそうですが、一切予備知識を入れない方が当然楽しいので、その点はご了承ください。

予告編から分かるのは、どうやら舞台は夢の中であるということ。

しかし、夢というのは物語にとって非常に危険なものである。

それは「夢オチ」という禁じ手のせいだ。

物語とは、その作者が作った設定と伏線というルールにのっとったものである。

夢オチとは、最後の結末が「いろいろあったけど全部夢でした」というもので、設定も伏線も無視した着地であるために、その物語を楽しんでいた受け手を大いに裏切ることになる。

それでも、夢オチで着地してしまった以上、物語の受け手サイドが何も言えないのは、我々が夢について経験的に認識している点があるからだ。

それは、

「夢の中では何でもあり」

ということである。

そのため、夢を扱った物語は、普通はファンタジーやオカルトなどにカテゴライズされてしまうことが多い。

もともと何でもありなジャンルの方が、夢との親和性が高いからだと思われる。

しかし「インセプション」はファンタジーでもオカルトでもない。

通常、舞台を夢の中にしてしまうと、どうせ何でもありなんでしょ、と観客に思われてしまうばかりか、夢オチを使ってしまえば、総スカンを食らうことになる。

そもそも物語の作り手にとって、出来れば使いたくないのが夢というものだと思う。

しかし、本当に夢というものは何でもありで、ルールがないものなのか?

たとえば、授業中に居眠りをしてしまって、ハッと我に返り非常に焦った経験はないだろうか?

また、目覚ましのアラームで起きたあと、つい二度寝してしまい、再び目が覚めて慌てて時計を見た経験は?

これは、夢の中と現実時間の体感時間のズレから生じる焦りだ。

また、これはあんまり人から聞いたことがないのでレアな経験なのかも知れないが、僕は夢の中で、これは現実じゃないと気付くことがたまにある。

直近の経験だと、夢の中で、僕はぬかるみの中を靴を履かずに靴下だけの状態で歩いていた。

足には泥の柔らかい感触があるのだが、歩いてる途中でふと気付いた。

靴下にしみ込んでくる水分の不快な冷たい感じが一切ない。

これは現実じゃない。夢の中だ。

夢の中で、これは夢だと認識する。そんな経験はないだろうか?

また、夢の中で、猛烈に眠くて、夢の中にも関わらず、さらに寝ようとしていた経験はないだろうか?

そんな、何でもありと思われている夢というものに、意外にも存在するさまざまなルール。

クリストファー・ノーラン監督はそれを構成して物語にしてしまった。

まず、その視点とストーリー・テリングに拍手を送りたい。

そして、予告編で既に我々を驚かせている映像の数々。

よく、どうせ全部CGでしょとか言っちゃう人がいるが、僕は絵作りについてそういった意見に違和感を覚える。

なぜかというと、映画で見せられるイメージは、結果が全てであって、それがどうやって作られたかなんて基本的にはどうでもいいことだと思うのだ。

(僕の場合は、技術的な部分にも非常に興味あるけれど、それはまた別の問題だ)

CGを使わないことを目指しました。とか訳の分からないこだわりで、しょぼい映像を見せてくる監督とか、全く意味が分からない。

合理的に手法を選択すればイイだけじゃないのか?

実際、クリストファー・ノーランの前作「ダークナイト」で分かったことであるが、彼の絵作りは非常に合理的であると思う。

「ダークナイト」で驚かされるトレーラー前転のシークエンス。

誰もがCGだと思いきや、実際にトレーラーを前転させているのである。

CGでしか表現できない部分はCGで描き、実写で可能で、そのほうが迫力が出るなら実写で、あるいは予算に応じて、と、そこに最適な方法を取捨選択しているのだと思う。

そのため、出来上がって来るイメージはどれも鮮烈で、素晴らしい。

特に今回の「インセプション」は、我々が見たこともないような映像のオンパレードだ。

映像だけでもはや至福の瞬間の連続であるが、ストーリーも非常に良く出来ている。

伏線も構成も素晴らしい。

ラストカットの切り方や、エンドロールの最後に流れる曲の仕掛けまで、完璧です!

「インセプション」感想漫画コマ1

“夢の中でこいつを捕まえたぞ”
“良し 計画通りだ”

「インセプション」感想漫画コマ2

“おい こいつおかしいぞ”

「インセプション」感想漫画コマ3

“消えた”

「インセプション」感想漫画コマ4

“何なんだこいつは?”
“ジャパニーズ妖怪だ”