「容疑者Xの献身」感想(ネタバレなし)

※ジャケット画像はAmazonリンクを使用しています。

映画「容疑者Xの献身」観てきました~。

正直そんなに期待していなかったけど、素晴らしい出来でした。

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(注:基本的に以下の感想はネタバレなしの方向で書いています。ただ物語は何でもそうですが、一切予備知識を入れない方が当然楽しいので、その点はご了承ください)

「容疑者Xの献身」はドラマ「ガリレオ」の劇場版。

ドラマ「ガリレオ」といえば東野圭吾原作の「探偵ガリレオ」シリーズ(※1)を月9(※2)でドラマ化したもの。

僕は原作をまだ読んでいないので(そもそも評価の高い「容疑者Xの献身」にちょっと興味があった程度だった)、以下はドラマ・映画版の説明である。

「ガリレオ」は主人公の物理学科准教授、湯川学福山雅治、そして彼に事件捜査を以来する女性刑事、内海薫柴咲コウという豪華なキャスティング。

月9とはいえ福山・柴崎クラスの俳優を同時にキャスティングするのが容易でないのは想像に難くないが、それが実現出来たのはドラマ「ガリレオ」が、この映画「容疑者Xの献身」までを含めたプロジェクトであったからだ。

ガリレオといえば倒叙(※3)の推理ドラマで、犯人が通常では考えられないような方法で犯行を行うため、事件が一見オカルトにすら思えるのだが、それを天才物理学者である主人公の湯川学が科学的に解決していく物語である。

ドラマのカタルシス(※4)は、湯川が実験によって犯行をまさに「証明」していく点。

そして一体何をそんなに計算する必要があるのか、とツッコミすら入れたくなる、湯川が事件を解き明かす際にその辺に突然数式を書きなぐるシーンだ。

このシーンはいわばドラマの「お約束」で、まぁ探偵ものには必要なシーンだろう(笑)(※5)

そんな「ガリレオ」は全10回が放送され、先日2008年10月4日には「容疑者Xの献身」の宣伝も兼ねて新作「ガリレオΦ(エピソードゼロ)」が放送されたばかり。

「ガリレオΦ」はまさに、ドラマ通常回のスペシャル版として作られており、そのカタルシスも健在。

当然、原作未読の僕は「容疑者Xの献身」も「ガリレオΦ」をさらに予算アップさせたようなものを想像していた。

しかし、その予想は良い意味で大きく外れる事になる。

「容疑者Xの献身」の冒頭は「ガリレオΦ」のラストシーンから始まる。

洋上で爆発したクルーザーの謎を、湯川が、これぞ劇場版というべき規模の大掛かりな実験で証明してみせる。

やっぱり劇場版だなぁ、とニヤニヤしていたのもこの最初の部分だけだった。

実はこの導入部だけが、ドラマ「ガリレオ」の文法に則ったもので、その後は全く別の種類のカタルシスが用意されているからだ。

そういった意味で、この予算をかけた(本編といっさい関係がない)導入部は非常に上手い。

ここだけでドラマ「ガリレオ」ファンのカタルシスが解消されているし、その後の展開は非常に「本格」的だからだ。

そもそも、マーケティングを考えるならば、映画のタイトルは、いかに原作が有名とはいえ「ガリレオ劇場版:容疑者Xの献身」のようにするべきであろう。

そこをあえて「ガリレオ」を外し「容疑者Xの献身」単体にしている事からも分かるが、この作品におけるドラマ「ガリレオ」の比重はそこまで高くないし、「容疑者Xの献身」に対するスタッフの意気込みが伝わってくる。

事実「容疑者Xの献身」は、単体で非常に楽しめる作品となっている。

今回、湯川と対決するのが、高校の数学教師であり、湯川と同じ帝都大学出身の石神哲哉(堤真一)だ。

石神哲哉は、湯川をもってして「天才」と言わしめるほどの頭脳の持ち主である。

その湯川の言葉と、冒頭の彼の高校の授業風景で、湯川以上に感情に左右されない論理的な人物である事が容易に理解できる。

石神はとあるきっかけで事件に関わっていくのだが、そこである疑問が浮かぶ。

そこまでの頭脳が、なぜ「自首」を選択しないのか?

見過ごしがちだが、たいていの物語は「自首」を選択すると物語にならないからという暗黙の了解で話は進む。

しかし本作では「自首」を選択しない理由すらも途中で明らかになるのだ。

(まぁ分からなかったアナタにはご愁傷様と言うより他ないが)

「容疑者Xの献身」で使われるトリックは、通常の「ガリレオ」と違い、オーソドックスなものばかりである。

また、石神哲哉を演じる堤真一や、花岡靖子を演じる松雪泰子と、演技力のある俳優を揃え、通常の「ガリレオ」とは全く違う文法とカタルシスが用意されている。

これはまるで、

「奮発していつもより豪華なレストランにフレンチを食べに行ったのに、出てきたのはなぜかお寿司で、それがまた文句を言えないほど美味しかった!」

みたいな感覚だ。

僕が原作未読なせいもあるが、正直なところドラマ「ガリレオ」を出発点として、「容疑者Xの献身」に着地するとは予想だにしていなかった。

キャスティング・俳優陣の演技・プロット・そして些細な台詞にまで神経の行き届いた素晴らしい出来であると言える。

ドラマ「ガリレオ」を観て、劇場に行くほどじゃないなぁ、と思っている方にこそオススメです。

とりあえず僕は、原作「容疑者Xの献身」も読んでみる事にします。

(※1)「探偵ガリレオ」シリーズ:東野圭吾原作

(※2)月9(ゲツク):フジテレビ連続ドラマのうち月曜9時枠のものを特にこう呼ぶ。視聴率が高めで注目度も高い。

(※3)倒叙(とうじょ):通常の推理モノでは犯人やトリックは最後に解き明かされるが、倒叙形式では通常とは逆に、先に犯人が(読者や視聴者に)明かされる。「古畑任三郎」などが有名。

(※4)カタルシス:本来は浄化の意味であるが、物語などでの伏線の解消ポイントやその種類などを指す。表現における気持ちいいポイントや質の事である。

(※5)「犯人分かっちゃったんですけど」「じっちゃんの名にかけて」「ずるっとまるっとお見通しだ」…そういう事です(笑)