この映画の謎とはいったい何なのか?
「エイリアン(1)」「ブレードランナー」「グラディエーター」のリドリー・スコット監督の最新作「プロメテウス」観てきました。
早速のレビューです。
注:基本的に以下の感想はネタバレなしの方向で書いています。ただ物語は何でもそうですが、一切予備知識を入れない方が当然楽しいので、その点はご了承ください。
今回のみさらに注意:副題にも示していますが、プロメテウスはそもそも何を謎にして観客を引っ張っているのかが良く分かりません。
そのため、今回に限っては以下の内容が重大なネタバレにつながってしまうかも知れません。
いつも通り、ストーリーや結末に関するネタバレはありませんが、その点のみご注意ください。
「プロメテウス」のあらすじと「エイリアン」シリーズとの繋がり
あらすじ:西暦2089年、考古学者エリザベス・ショウは、地球の様々な遺跡の中に天を指す巨人の姿と太陽系の座標を発見。西暦2093年にその発見をもとにウェイランド・コーポレーションの宇宙船プロメテウスに調査チームとともに乗り込み、発見した座標の太陽系に向かう。そこにはエリザベスがエンジニアと呼ぶ高次生命体がいるかも知れない…。
この深宇宙探査を、地球や国家などの公共団体ではなく企業が行なっている点、乗組員の中にアンドロイドがいる点など、早くもエイリアンとの共通要素が見受けられる。
そもそも映画「プロメテウス」の出発点は「エイリアン5」の企画であった。
数年前、エイリアン5の企画の噂が流れた。どうやらエイリアン(1)のリドリー・スコットが再び監督するようになるようだ、と。
エイリアンは現在4まで作られていて、話はまだ続いている。
そうは言っても、エイリアン(1)の公開は1979年。最新作のエイリアン4の公開ですら1998年であり、昔の映画であるという印象は拭えない。
エイリアン・シリーズは毎回監督が代わっており、有名監督の登竜門的な役割を果たしてきた。
しかし、さすがにここまで時間が経過すると、5と言われても今更感が強く、オリジナルのリドリー・スコットが監督するならば観たいかなというくらいの期待度であった。
ところが、その後、エイリアン5の噂はぷっつりと途絶えることになった。
そして、発表されたのが、この「プロメテウス」だったわけである。
発表された予告編やあらすじは、人類起源の謎を解く、とか、我々の終末を発見する、とかいった内容で、エイリアンとの関係は言及されておらず、エイリアン5の企画中に、いろいろ検討してたらエイリアンから離れたのかなと思っていた。
それでもエイリアンの前日譚であるという噂は聞こえてきていたが、まぁエイリアンの前日譚なら、まだ人類はエイリアンと遭遇していないのだから、同じ世界観の外伝なのだろうなくらいに思っていた。
僕は3Dの吹替版で観たのだが、序盤のエリザベスの夢のノイズの処理、探査プローブのレーザー、ホログラムやスターマップのパーティクルの拡がりなど、とても効果的に機能していて美しくて良かった。
ストーリーは無駄がなく、非常に洗練された印象。悪く言えば意外にこじんまりしているとも言えるが、これは巨匠が映画を作ると長尺になりがちという先入観からもたらされるもので、冗長になるよりはむしろ良いと思う。
個人的には、ストーリーの構成上仕方ないと思うのだが、目的地の衛星付近に到着したあたりで、乗組員が調査の目的を聞かされるってのがものすごく怖い(笑)
地球を出る前に聞いとけと。衛星付近で聞いて、とんでもない内容だった場合、もはや断れないだろうと。しかも、どうやら顔合わせすらされてないからね。




「プロメテウス」最大の謎とプロモーション戦略
そして、予告されていた人類起源の謎というのは、この調査の目的、つまり映画の序盤で明かされる。
そもそも、その答えがこの調査の出発点だからだ。
そこで、進化論の否定という台詞がちょこっと出てくるので、話が脱線してしまうけれど、進化論の謎というのは、どうやって無生物質から生命が発生したのか、というのがその本質でしょう?
それが、地球外の高次生命体によってもたらされたとなっても、じゃあその高次生命体はどうやって発生・進化したの?と問題がネスト(入れ子構造)化するだけで本質的な解決には至らないと思うわけ。
それが進化論の否定に繋がるとも思えないし、そもそもこの映画の中で人類起源の謎というのは、実は大した意味がない。
すると、そこに大きな謎が出現する。
映画「プロメテウス」の謎とはいったい何なのか?
そう、つまり映画「プロメテウス」の謎とは、
「リドリー・スコットが制作した新作SF映画を観に行ったら、それが「エイリアンの前日譚」だった」
ということではないのか?
そう考えると非常に納得がいくというか、そうでなければこのプロモーションはおかしい。
途中で出てくるアイツはわざわざフェイス・ハガー(※1)じゃないという徹底ぶりだし。
実際に、プロモーションにおいて、とにかくエイリアンの前日譚であることが徹底的に秘密にされている。
しかし、実際にはタイトルに「エイリアン・エピソードゼロ」とか「エイリアン・ビギンズ」とか入れておけと言いたいくらい、がっつりエイリアンの話なのだ。
この映画の本質は「エイリアン(1)で残されたままになっていた、スペース・ジョッキー(※2)の謎を、リドリー・スコット監督自らが解き明かした」ということである。
ふつう映画において続編や外伝であるということは、宣伝すべきアドバンテージであれ、秘密にすべきことではない。(ビジネス的に秘密にする意味がない)
そこを逆転の発想で秘密にしたのが、この「プロメテウス」だと思う。
正直、それはアメリカの映画における懐の深さが為せるわざだと思うし、ネットが発達した現代においてはそれはマイナスにならないという判断だったのかも知れない。
ただ、こと日本に関してはもっとエイリアンを前面に押し出したプロモーションの方が良かったのではないだろうか。
「エイリアン」で残されていた、スペース・ジョッキーの謎。リドリー・スコット監督自らの手によって遂に明かされる。
このキャッチコピーの方がお客さん入るでしょ。普通に考えて。
と、映画本編に関係ない部分で心配してしまう僕であった(笑)
さて、本編のエイリアン4は、ついにエイリアンとリプリーが地球圏まで来たところで終わっているので、こちらの続編もついでにリドリー・スコット監督にお願いしたいところなんですが…。
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- (※1)フェイス・ハガー
- エイリアン(ゼノモーフ)第2形態。顔にガバっと張り付くあれ
- (※2)スペース・ジョッキー
- エイリアンに登場する巨大な異星人の死骸
