「ターミネーター:新起動/ジェニシス」感想(ネタバレなし)

もっともリブートが望まれたシリーズ、新起動!


※ジャケット画像はAmazonリンクを使用しています。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス(Terminator Genisys) 」とは

ご存知、ジェームズ・キャメロン監督の出世作、「ターミネーター」「ターミネーター2」をベースに新たにリブートされる作品である。

新たに3部作が予定されており、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」はその1作目にあたる。

ターミネーター/ガーディアン役を、オリジナルからお馴染みのアーノルド・シュワルツェネッガーが演じる。

監督は「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」のアラン・テイラー。

また、オリジナルのジェームズ・キャメロン監督も本作に協力している。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス 」序盤のあらすじ

2029年。審判の日から続く機械軍と人類抵抗軍との戦いは、未来を知っているかのように行動するリーダー、ジョン・コナーのもと、ついに人類側の勝利で決着を迎える寸前までやってきた。

敗北を覚悟した機械軍は、秘密兵器を起動する。

それは、過去にターミネーターを刺客として送り込み、ジョン・コナーの母親を殺害するという計画を実行するタイムマシンであった。

人類抵抗軍は、秘密兵器を止めるべく侵入するも、既にタイムマシンによって、ターミネーターT-800が過去に送られていたあとであった。

ジョン・コナーは、過去の母親を守るために、カイル・リースを過去に送ることにする。

タイムマシンに入り、時間の壁を越えようとするカイル・リースは、それまで経験したことのない過去の記憶を思い出すのだった…。

前田邦彦の感想

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「アイルビーバック!」

ついに「ターミネーター」のリブートである。

思えば、ターミネーターのリブートは必然であった。

なぜか?

まずは、これまでの「ターミネーター」シリーズを振り返るところから始めてみたい。

これまで、以下の作品が存在する。

  • ターミネーター(The Terminator)(1984)(T1)
  • ターミネーター2(Terminator2: Judgment Day)(1991)(T2)
  • ターミネーター3(Terminator 3: Rise of the Machines)(2003)(T3)
  • ターミネーター4(Terminator Salvation)(2009)(T4)
  • ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ(Terminator: The Sarah Connor Chronicles)(2008-2009)(TSCC)※テレビドラマ作品

(ただし、僕は、ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ(TSCC)は観ていない。理由は明快で、シーズン2にて未完のまま打ち切り終了しているからである。)

ターミネーター(T1)は、ジェームズ・キャメロン監督の出世作である。

しかし、当時はまだ彼は有名な監督ではなく、ターミネーター(T1)は低予算で作られた。

ターミネーター(T1)のヒットにより有名になったキャメロン監督は、続く「エイリアン2(Aliens)(1986)」の大成功によってヒットメーカーの地位を得る。

その後、「アビス(The Abyss)(1989)」を経て作られたのが、ターミネーター2(T2)である。

ターミネーター2(T2)は、続編であるが、低予算で作らざるを得なかったターミネーター(T1)をきちんと予算をかけて作り直すというセルフリメイクの側面を持つ。

これは、両作に登場するオープニングの2029年のシーンの違いなどで一目瞭然。

また、アビスによって得られたCGIによる液体のキャラクターを発展させた新型ターミネーターT-1000など、素晴らしい進歩が感じられる。

ターミネーター(T1)は、未来において、人類を滅亡寸前までに追いやった人工知能スカイネット率いる機械軍が、人類抵抗軍のリーダー、ジョン・コナーによって敗北の危機にさらされ、タイムトラベルによってジョン・コナーの母親、サラ・コナーを殺害するべく、アンドロイド・ターミネーターを送り込むというプロットである。

これに対抗して、ジョン・コナーは、カイル・リースを母親を守るために過去に送る。

実は、過去に向かったカイル・リースと、サラ・コナーが結ばれて、ジョン・コナーが誕生する。いわば「親殺しのパラドックス(※1)」の逆バージョンの構造である。

続く続編のターミネーター2(T2)では、ターミネーター(T1)において失敗した機械軍が、今度は母親のサラ・コナーではなく、少年のジョン・コナーを直接殺害しようと試みる。

ターミネーター(T1)とターミネーター2(T2)は、タイムトラベルものの繰り返しで、ターミネーター2(T2)のラストには、スカイネットの誕生が阻止されることにより、人類滅亡のきっかけとなった「審判の日」が回避されたというエンディングが用意されている。

これにより、ターミネーターは、キレイに完結したはずだった。

しかし、悲しいかな、さらに続編、ターミネーター3(T3)が作られることになる。

ターミネーター3(T3)は、これぞ蛇足という作品である。

人類抵抗軍のリーダーとなるべき男だったジョン・コナーが、審判の日を回避したために、うだつのあがらない日々を送っているという入り口は面白いものの、三度(みたび)送られてくる機械軍の新型ターミネーターT-Xは、ターミネーター2(T2)におけるT-1000のような素晴らしいアイデアとは程遠い残念な出来。

同じ繰り返しではあっても、その必然性は乏しく、どうすればこの戦いの繰り返しが終わるのか、そもそも審判の日は回避できないのか、いや、ジョン・コナーのためにはむしろ審判の日が来たほうが良いのではないか、と終始もやもやした気分のまま作品は終了する。

ターミネーター4(T4)は、基本的には前3作の直接の続編ではなく、当初の予定では3部作を予定していたリブート作品であった。しかし、制作会社の倒産などにより、続編が作られることはなかった。

結局のところ、ターミネーターは、基本的にターミネーター(T1)とターミネーター2(T2)によって完結しているし、そこから続けようとすると、どうしても蛇足にならざるを得ない構造なのである。

なぜかというと、ターミネーター3(T3)のように、結局タイムトラベルの無限ループになってしまうから。

基本的に機械軍は、ジョン・コナーの血統しか狙うことができない。

たとえば、遠い過去に戻り、人類の祖先を殺しに行ってしまうことは、それこそスカイネットを発明する人類を誕生させないことにつながるために、それはできないのだ。

まぁ、ジョン・コナーの祖先を西部開拓時代に遡って殺害するとかなら…バック・トゥ・ザ・フューチャーかっ!

というわけで、途中で終了してしまったターミネーター4(T4)は置いといて、最近のリブートブームにもれず、ターミネーターも今度こそリブート作品の仲間入り。これが正解だろう。だって続けようがないがないんだから。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス」は最初から3部作を予定しており、本作が、その第1段となる。

まず入り口が秀逸。ターミネーター(T1)とターミネーター2(T2)同様、未来における機械軍と、人類の抵抗軍の戦いから始まる。

ここで、これまではストーリーから逆算して想像するしかなかった、機械軍がターミネーターを過去に送る場面が描かれる。

そして、それを追うように、ジョン・コナーに選ばれたカイル・リースが、ジョン・コナーの母親、サラ・コナーを守るために1984年に送られるのだ。

ここまでは、ターミネーター(T1)とターミネーター2(T2)を最新映像にてアップデートした形になる。

しかし、カイル・リースが1984年に到着したのと同時に、観客も「こりゃ何か違うぞ?」と気付かされる仕掛けになっているのだ。

そこから怒涛の展開が続くのだが、3部作の1作目ということもあり、全編これからの伏線ともとれる内容になっている。

鑑賞中は、常にこれはどういうことだ?と考えながら楽しめる。

何気ない台詞に、重大なヒントが隠されていたり、一瞬たりとも気が抜けない面白さだ。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス」で過去のシリーズと大きく違うのは、キャラクターの立ち位置である。

ターミネーター(T1)は、命を狙われるサラ・コナー。それを守るカイル・リース。サラ・コナーを狙うターミネーターという構造。

ターミネーター2(T2)は、命を狙われるジョン・コナー。それを守るターミネーターT-800。ジョン・コナーを狙うターミネーターT-1000という構造であった。

この2作の構造はまったく一緒で、このことからもセルフリメイクであることがうかがえる。

しかし、新シリーズでは、サラ、ジョン、カイル、ガーディアン、などなど、それぞれのキャラが時空を越えて絡みあう構造であり、旧作のように単純な構造にはなっていない。

一方で、ターミネーター同士のバトルや、壮絶なアクションシーンは健在。

また、T-800が炎に包まれ、その中からターミネーターの基本骨格、エンドスケルトンが登場するなど、ファンが観たかったであろう映像はきちんと押さえている。このあたりも巧い。

今回、新機軸として登場するT-3000は、ターミネーター3(T3)に登場するT-Xが、まったくその存在意義が分からない設定であった(※2)のと違い、きっちりターミネーターの最新型として強いのだろうなということが伝わってくる設定になっている。

液体金属のT-1000は強いものの、攻撃を受けたのちに修復する際にタイムラグが生じるが、T-3000は構造が違うためにその時間が短く、さらにはその構造を使って効果的な攻撃を繰り出すことも可能になっている。

この辺の映像も素晴らしい出来。

キャスティングは、ガーディアン/ターミネーターにアーノルド・シュワルツェネッガー。現在67歳のシュワルツェネッガーを活かし、老年期状態のT-800を登場させるというアイデアで乗り切っている。

エンドスケルトンは機械だが、そこに被せてある肉体は生身なので老化するというアイデアは、キャメロン監督のアイデアによる。

また、この新設定により、なぜタイムトラベルしてくるやつはみんな裸なのかという謎が明らかになることに(笑)

一方、本作には若き日のシュワルツェネッガー型、新品(?)のT-800も登場する。

こちらはもはやハリウッドの技術ならフルCGでいけるのではないかと思ったが、身体をブレット・アザーが演じるところにCG製のシュワルツェネッガーの頭部を合成している。

しかし、若き日のシュワルツェネッガーの頭部は、以下の動画で分かるように、モーションこそ本人が演じているものの、基本的にはCGIで作られている。

さて、もはやターミネーターといえばシュワルツェネッガーという図式のなか、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」で素晴らしいのはやはり、サラ・コナーを演じるエミリア・クラークだろう。

あらためて比べてみれば、旧作でサラを演じるリンダ・ハミルトンにそこまで似ているわけでもない。

しかし、彼女が画面に登場した瞬間に、有無を言わさず彼女がサラ・コナーなんだなということが一発で伝わってくる。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス」は、旧作をキャラクター構築や設定の構築に使い、さらにその差異をヒントとして使ってくる。

リブートとは、単なる仕切り直しではなく、こうあるべしというお手本のような作品になっているのだ。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス」では、予想外にきれいに話が収束するものの、その謎のほとんどが解決していない。

そのため、これからの展開を予想するも良し、単純にアクションを楽しむも良し、デデンデンデデンの音楽で単純に盛り上がるも良し、ターミネーター2で熱狂し、ターミネーター3で落胆したファンが待ち望んでいた作品と言えるだろう。

余談だが、さすがターミネーターというべきか、普段は映画館に足を運ばない層の客が大勢いたようで、みんなエンドロールになった瞬間に席を立ち、帰る帰る。

いや!今、映画、とくに続編前提の作品は、だいたいエンドロール後にワンシーン入れてくるから!

というわけで、本作もエンドロールのあとに重要なシーンが登場します。途中で席を立たないように。

「ターミネーター 新起動 ジェニシス」感想イラスト

ロボットが年をとるというのはいいアイデアかもしれない。

(※1)親殺しのパラドックス:「タイムトラベルによって、過去に戻ったある人間が、親を殺してしまった場合、どうなるのか」というパラドックスである。もし親を殺してしまえば、その子供が生まれてこないために、そもそも親を殺すことはできないが…。

(※2)ターミネーターT-X:エンドスケルトン上をT-1000同様の流体金属で覆い、変身可能だが内部骨格があるために変形は不可能。身体の中に様々な武器を内蔵している。うーん。